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コーラルの小話。
例えば。
出会うことが無ければ。
例えば。
エンドブレイカーにならなければ。
例えば。
生まれなければ。
そんな他愛の無いことを考えてはため息、進まない読書を止めて本を閉じる。
考えても、それはどうにもならない野暮な思考、答えなんてない。
「……変わってたかもしれないけど、でも分からない」
そう呟いて立ち上がる。
ふと掛け時計に眼をやれば夕方で、そろそろ夕食の支度をする時間だった。
彼が、帰ってくる
そう思うだけで笑みが自然に零れる。早足で部屋を後にしてキッチンへ。
今日の夜ご飯は何にしようかってエプロン付けながら考える。
彼は何を作っても美味しいって言ってくれるからなんだか少し照れてしまう。
でも僕より彼の方が料理が上手なのを知っている。
初めて食べた時は、どんなお店の料理よりも美味しかったのを今でも覚えていて。
口にしたら否定されて、でもやっぱり美味しいんだって伝えたら少し照れてた。
……そんな彼は、出会った頃より表情が柔らかくなったと思う。
誰も寄せ付けないその雰囲気、鋭い口調。
それはただの殻で、中を覗けばただただ純粋なそれでいて繊細な。
嗚呼、こんなにも優しい人だったなんて知らなかった。
そしてそれ以上に知らなかった事が僕には多すぎた。
泣き虫な僕は何度彼の前で泣いたか今はもう覚えてない。
その度に困らして、悲しませて、苦しませて。
だからもう泣かない様にって、馬鹿みたいに仮面被って道化になろうって。
例え無理なのを知っていても
「……今日は、好きなのにしよう」
彼が見せる一瞬の笑みが見たくて。
その笑みが僕の活力で、だから情けないほど依存している。
頼りなくて、ごめんね。でも大好きなんだ。
きっとこれは例えばでは繋げられない。
予測なんて、出来ない。今の僕の心だから。
だからそれを壊そうものなら僕はその全てを否定する。
それがなんであっても、絶対に。
弱い僕が選んだ答えが間違っていても
偽りじゃない。これが全てで真実だ
足元でイベルがにゃあと鳴いた。
彼も早く食べたいみたいで、ごめんね。もう少し待っててといって、僕は調理に集中した。
終