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アリアの小話。

過去その2


戦火があちらこちらから立ってる。
大地には亀裂が入りそこから人の手があちらこちらから見えている。
それを死体と区別をつけるのにそう時間は掛らない。実に一瞬だ。
自分はそれを見て見ぬ振りをして通り過ぎる。
助けてもその人間が二度と動くことなど無い事を俺は、身をもって知っているから。

「姫様」

声が聞こえ振り返ると仮面を被って伏せている人間が居た。
身体のあちらこちらには生傷があり、見ているだけで痛々しいと思う。
俺は持っていたアックスソードを地に刺す。

「戦況はこちらが優勢ですが、直に向こう側の勢力に押し返されます」
「結局は、何も変わらないんでしょ? だったらいつもの事だよ。…怪我人は?」
「迅速に手当をしております。それで、動ける者はまた戦場へ」
「無駄に命を落とさせたくはない。健康管理を怠らないで」
「承知しています、姫様」

「それに…朱影も、手当してから来い。…そんな姿、俺は見たくない」

膝を地に付けて腕に巻いていた布で簡単に生傷を覆う。
死んでほしくないと言う願望と見たくないと言う、拒絶。

「申し訳…ございません。姫様」
「朱影は腕がたつんだから、そう簡単に命を落とすなよ?」
「この命、姫様に捧げる為にあります。だから、そう簡単には命を落とす訳にもいきません」
「なら、早く治療してこい」

そう言い放って立ち上がり前を向く。気配が消えたのが、手に取る様に分かった。
小さく息を吐いて、アックスソードを握り土から抜くと背に仕舞う。
そして、頭の中で過る沢山の叫び声。それは怒号であり悲鳴。
沢山の声が頭の中で飛び交い、真っ白になる。
慣れた――そう言い切ってしまえるのなら、どんなに楽なのだろうか。
武器から両手は常に誰かも、もはや分からぬ血で濡れ身体も血を浴びた。
元から赤い髪も血を浴びたことで更に赤みを増したとも、思えてしまう。
もう何もかも…取り返しなどつく筈はなかった。

(もはや、呪縛かもしれない)

ふと声に出さず呟く。
涙は出ない。ただ、静かに目を伏せて耳を澄ます。
流す涙はもうとっくの昔に枯れた。まるで鬼だ、悪魔だ、と言われても何も言い返せない。
大人から見れば、こんな子供が戦場で身の丈より大きいアックスソードを振り回しているなんて。
ある種、愚の骨頂であり驚愕すべき事実かもしれない。
それに加え、涙を流せないだなんて。

「姫様、戦況が変わりました。行きましょう」

声と共にまた背後に気配を感じる。
頭を振って俺は踵を返す。頭の中は真っ白で何も無い。
先程の思考回路でさえ真っ白にかき消された。

「とっとと終わらせるよ、朱影」
「御意」

今だ戦火の上がる戦場を俺はまた走る。
真っ白の思考で、躊躇いもなく人間を殺しながら。


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